私は常々、安全を考える上で登山はクルマの運転に似ていると思っています。
もちろん、実際は全く違うものなので、あくまでも例えの話です。
クルマの運転なら、ほとんどの人がよく経験していることなので、例えとしてはわかりやすいと思います。
そして、例えることで自分を戒めています。
どんなことが似ているのでしょうか
こじつけもありますが、これから登山を始める人や、まだ経験の浅い人にとって参考になれば幸いです。
それでは、独断的ですが、見て行きましょう。
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「経験値は高いほうがいい」
これについては、異論は少ないと思います。
一般的には、経験の多さと“ひやりハット”の数は比例します。
“ひやりハット”が一度脳にインプットされると、次回からは同じ場面ではより注意深くなります。
登山で言えば、登山道でバランスを崩すことや道迷いに限らず、突然の天候の変化や水分・カロリー摂取、時間配分、服装・装備に関するちょっとしたミスなどなどが“ひやりハット”に当たります。
知識だけでは補えないことを、経験によって会得することが出来ます。
経験を重ねることで、より安全な登山が出来るようになります。
「慣れた頃が一番危険」
クルマの運転で一番注意しないといけないのは、免許を取ってからすぐではなくて、少し慣れてきてからのほうです。
私もまさしくその一人でした。
最初のうちは、恐る恐る走っていたのが、運転の操作に慣れてくると、もう十分上手くなったような気がして、スピードを出したりしたことを今でも覚えています。
実は、操作に慣れただけであって、いろんな場面に潜む危険な状況を把握していたわけではありませんでした。
クルマの運転に限らないと思いますが、これは精神的な問題であって、余ほど心に留めておかないと、誰しもが陥るワナだと思います。
登山で顕著なのは、慣れてくることにより、軽率な行動をしてバランスを崩して足を滑らすことです。
たとえば、岩登りの基本である三点支持を守らなかったりして滑落するのは、慣れた頃に多いようです。
実際、慎重な岩場初心者が滑落事故に会うことはほとんどありません。
※絶対ないということではありません
「どんなに上手くても、事故の可能性はある(常に謙虚に)」
クルマの運転なら言うまでもないことですが、登山に置き換えても同じことが言えます。
経験豊かな登山者でも、事故に会うことはあります。
山岳部に入って10何年ものキャリアがある人でも、天候の急変に対応できなかったり、滑落したり、道迷いで下山できなかった例を時々耳にします。
もちろん、それなりの経験者なので、事故の確率は低いのですが、それでも、いつ事故が起きても不思議ではないという謙虚さは常に必要だと思います。
「飲酒運転はご法度、飛ばしすぎもだめ」
クルマの飲酒運転は違反ですが、登山での飲酒は違反ではありませんが、絶対止めたほうがいいです。
私が登山を始めたのは、暑い夏の日でした。
その山は、頂上に売店があってビールが売っていたので、暑さに耐え切れず、ついビールを飲んでしまったのです。
もう最高においしかったのですが、標高の高いところで飲むお酒は酔いやすく、いつも以上に酔っ払った感じがしました。
その酔いは下山のときに影響が出ました。
下りは上りより、足を滑らす危険性が高くなります。
案の定、こけました。
幸い、パンツが泥だらけになるだけで済みましたが、こけ方や場所によっては大怪我につながる恐れもありました。
夏季の北アルプスの縦走などでは、要所々に山小屋があり、普通にビールが売られています。
そこで宿泊を決めるのならかまいませんが、休憩するだけなら絶対飲んではいけません。
その後の歩きが急につらいものとなり、後悔します。
そして、下りは特にスピードを抑えましょう。
下りでこけると大怪我につながりますよ。
「少し上手くなると、ヘタな人や初心者を見下す人がいる」
これは全ての人がそうだというわけではありませんが、初心者マークをつけたクルマが自分の前をゆっくり走っていたりすると、ついあおってしまったりする例は後を絶ちません。
登山の場合も、狭い登山道で、歩みの遅い登山者を追っかけるように、後ろから必要以上に接近して歩いたり、初心者のぎごちない行為を見下したりすることが挙げられます。
前者の例では、それが原因で、前を歩く登山者がひっくり返ってケガでもしたら大変です。
後者の例で言えば、初心者に対して、俺様は違うぞと言わんばかりに素早く岩場を登ってみたり、登山道から外れて飛び跳ねるように上り下りして、自分自身が危険な目にあうことにもつながります。
慣れてきても、くだらない優越感は捨てましょうということです。
そして最後に、これはクルマの運転が楽しいと思う人限定ですが、山登りもクルマの運転も楽しいけど、常に危険と隣りあわせだということです。
私も十分気をつけたいと思います。
説教じみた話になってしまいましたが、私自身始めた頃は少なからず謙虚さに欠けていた部分もありました。
そして、クルマの運転に例えることで、容易に自分を省みることが出来るようになりました。
もしあなたが、登山を始めて間もないのであれば、少しは参考になると思います。